推し活修行 ~田中圭さんを深く静かに推す~

映画・演劇・本(乱読)が好き。田中圭ファン。圭モバプラチナ会員。

演劇は楽し(2)

続き。田中圭さん版、好きな舞台。
ここで改めて説明しておかなければならないのは、あくまで個人の好みに基づくということ。演劇批評を生業としている人ならともかく、一介の愛好家が語れることは、好みの範疇から出ないし、偉そうに語るのも違うような気がする。
かの映画評論家の淀川長治氏は「私はかつて嫌いな映画に出会ったことがない」と語った。これは映画を創る全ての人への愛とリスペクトに溢れた言葉であり、それ故に淀川氏の批評は上品だったのだと思う。
自分が好まない作品であっても、一方でそれを愛してやまない人がいるのだということを常に頭に入れておくべきだ。近頃ネット上で映画や演劇や本に対して汚い言葉で叩いている一部の人たちを見ると、腹立たしさと共に恐怖さえ感じる。

では、前置きはこのくらいにして、私が好きな圭さんの舞台ベスト3を。

3位「芸人交換日記」(2011年)
私が圭さんにはまった記念すべき作品だが、これが1位ではなく3位というのには理由がある。鈴木おさむ氏と圭さんのコンビ作品は3作あるが、常に溢れ出しそうな熱量を撒き散らし、多少の息苦しさを感じさせる(私には)。膨大な台詞量、独白の多さ、それを熱演という言葉で片付けられてしまうもったいなさ。うまく言えないが、力でねじ伏せるようなことをしなくても、少しの「間」や緩急で観客を引き付ける繊細な引き出しを田中圭という俳優は持っているのに、と思う。

2位「トライブス」(2014年)
「芸人交換日記」とは対極にあるような作品。相手の唇の動きで話している内容を理解していた耳の不自由な青年が、手話を学び、家族の庇護から離れて自己を解放していくさまが素晴らしかった。長い指の美しい手話。後半ではまるで声が聞こえてきそうな程激しい手話に圧倒された。経験豊富な先輩方との共演も嬉しかった。
実はこの舞台にはちょっとした演出があった。私は前から2列目の席に座っていたのだが、最前列の右端の席が空いてるのが気になっていた。もったいないなぁなどとぼんやり考えていると、開演直前白いセーター姿の圭さんが現れてすっとそこに座ったのだ。そういう演出だったようだが、隣席のお客さんはさぞ驚いたことだろう。彼の周りだけぼんやりと白く輝いているようで、皆息を呑んだ。声を出す人など誰もいなかった。

1位「バブー・オブ・ザ・ベイビー」(2013年)
この舞台は関西公演が無かった。仕方なく東京1公演だけ申し込んだのだが、後で大いに悔やむことになった。
4階建てのビルの各階で巻き起こる、ゾンビと住人との闘い。各階毎に、5人の俳優さんが手分けしてあらゆる役をこなす。イタリア料理店、古地図の出版社、ヤクザの組事務所、メイドカフェ。圭さんは、杖をついた出版社の長老からメイドのももちゃんまで、4つの役を生き生きと演じていく。特筆すべきは、メイド衣装で歌い踊ったこと。メイド姿に何の違和感もなく、一体どんな腰をしているのかと思った。
私は舞台でコメディを観ることが少ない。嫌いなわけではないが、しっとりと落ち着いた話が好きなので、つい敬遠してしまう。が、今まで観た全ての演劇の中で一番楽しく笑った作品が今の私のベストなのだ。私は一人だったが隣席の若い男性も一人のようで、彼はアハハハハと高らかに何度も笑い、私もつられてよく笑った。ギャグなどない笑い。見事に計算された演出で引き出される笑い。テンポは早いがバタバタしない。伝えたいテーマがちゃんとあって、それはきちんと客席にも伝わる。実に上質なコメディ。いつか是非再演をと願っていたが、役者さんの一人が役者を辞めてしまわれたので、オリジナルメンバーの再演は無くなった。DVDも出ていない。永遠に頭の中だけで、ももちゃんは可愛らしく踊っている。