推し活修行 ~田中圭さんを深く静かに推す~

映画・演劇・本(乱読)が好き。田中圭ファン。圭モバプラチナ会員。

少数派?!

ずいぶん昔の話になるが、仕事が終わった後で行った映画館で、たった一人の観客になったことがある。アート系のシアターだったので小ぶりではあったが、何とも落ちつかず不思議な感覚を味わった。私が来なかったら上映は無しで休憩になり、むしろスタッフにはその方が良かったのかしら?と妙なことを考えたりもした。観終わって扉を開けるとホールは次のレイトショー作品を観る客で溢れており、皆一斉にまるで珍しい生き物でも観るような目で、一人だけ出て来た私を見た。その時私が観た映画は、ある人気俳優が初めて監督をした作品だった。成功とは言い難く話題にもならなかった。申し訳ないことに、どんな内容だったか全く憶えていない。しかし、私は彼がすっかりオジサンになった今も彼のことは結構好きである。

その時私は特に大きなショックを受けた訳ではなかった。それよりずっと前から、観る度に観客数人というようなことが何回もあったので、自分の好みがそんなにも世間一般の感覚とずれているのか…と思うのはいつものことだった。

20代前半から映画は好きでよく観た。同僚に、試写会のみで年間100本観る強者がおり、彼女ほど当たらない私はせっせと割引券を買って観ていたのだが、ある時チケットの販売所で大阪映画サークルというミニ新聞を見つけて持ち帰った。文字通り映画好きの集まりで、大作や人気作よりヨーロッパやアジアの作品が積極的に紹介されていた。当時大好きだった「ヒポクラテスたち」という映画について投稿すると掲載され、嬉しくて気合いが入ってどんどんそのサークルに傾倒していった。年末にはマイベストテンの人気企画があり、それに採用されることを目標に私は週2本のペースで映画館に通った。沢山観るうちに、ヨーロッパ映画と言っても一番好きなのはイギリス映画だとわかり、台湾映画も少し齧りはしたが、香港映画にはズブズブにはまった。ただ、芸術的に評価が高く映画マニアに絶賛されているような作品なら何でも気に入った訳ではない。ある時サークル紙で絶賛されていたロシアのアンドレイ・タルコフスキー監督の「サクリファイス」という映画を観に行った。仕事が忙しく、ギリギリで映画館に向かうと超満員。私はコンビニで買ったおにぎりを頬張りながら立ち見で観始めた。しばらくすると、意味もなく段々腹が立ってきた。その哲学的な匂いや思索的な雰囲気を纏った主人公の表情が無性に鼻につき、私は途中で映画館を出た。うわ~っと叫びたいような気分だった。憑き物が落ちたような気分になり、その時で私の映画サークル熱は冷めた。

その後も映画はいっぱい観てきたが、今はただただ自分にとって面白ければいいのだと思っている。