推し活修行 ~田中圭さんを深く静かに推す~

映画・演劇・本(乱読)が好き。田中圭ファン。圭モバプラチナ会員。

消える日本語

大昔の話になるが、以前住んでいた家にはムカデがよく出た。私は昆虫全般が苦手で、とりわけ足の多い生き物は恐怖以外の何物でもない。退治するにはどんな薬が一番効果的だろうと探していた時、新聞に載っていた記事に目が釘付けになった。部屋の四隅に樟脳を置けば、その匂いが苦手なムカデは来ないと書いてあったのだ。半信半疑で早速やってみると、見事に翌日から全く来なくなった。それ以来、私は今の家に越してからも、全ての部屋の四隅に樟脳を置いている。先日、去年置いた物が一年を越えたので、100円ショップに買いに行った。最近の衣類の虫よけは進化していて、「交換して下さい」の文字が出たりして便利だが、ムカデ避けには向かない。もっと小さな昔ながらの樟脳でいいのだ。それも、少量。

で、近所の100円ショップに行き、樟脳を探したが場所がわからない。一番手が空いていそうな若い女性店員に声をかけた。

「すみません、樟脳はどこですか?」

「樟脳?」

「(あ、樟脳を知らないか…)パラゾール的な…」

「??」

「衣類の虫よけとかに使われる…」

で、「うちに置いているのはこれだけです」と彼女が案内してくれたのは、ベランダなどにぶら下げるタイプの虫よけが色々並んでいる棚だった(虫は虫だが…)。しかし、偶然その隣に、小袋に入った樟脳が積んであった。「あった!これこれ!樟脳」と彼女に見せると、はあ…とぼんやり頷いた。樟脳は死語なの?日本語はどんどん消えて行くんだなぁ。

まぁ、衣類の虫よけなどは商品名で呼ばれることが多いから、知らない人がいても仕方がない。

しかし、昔から使われてきた美しい日本語がどんどん減ってきたのは確かで、最近はテレビを見ていても同じような言葉ばかりだ。「可愛い」が食べ物にも使われていて、うーむと唸ってしまう。圧倒的に語彙不足だ。

人気の男優さんを特集する番組で、ファンに彼の魅力を尋ねる時にも強く感じる。「どこがいいの?」「全部!」いや、気持ちはわかる。確かにそうだが、第三者には全く伝わらない。「カッコいい」「可愛い」。うーん、うーん。勿体ない!もっとあるでしょう。その人の素晴らしさを表現する言葉が。

だが、しかし、例えば圭さんのファンがマイクを向けられて、「演じるのではなくその役を生きる繊細な演技力が素晴らしい」「陰と陽の両方を内包する美しい横顔が好きです」などと語っても、あっさりカットされてしまいそうな気もする。テレビ自体が、美しい日本語を守ろうとしていない。