推し活修行 ~田中圭さんを深く静かに推す~

映画・演劇・本(乱読)が好き。田中圭ファン。圭モバプラチナ会員。

握手会考(2)

前回は圭さんとの握手のことを書いたけれど、実は圭さん以外の俳優さんとの握手でリアルに思い出に残っている二つのイベントがある。前回、対照的なこのイベントのことを書こうとしたのだが、あまりにも長くなりそうなので、二回に分けることにした。

その一つは1999年に東京国際フォーラムで開催された、レスリー・チャンさんの写真集発売記念サイン会である(ちなみに、24年前だが6000円だった)。圭さんはまだデビューすらしていない。私はこのイベントの為に前日東京入りし、握手券を得る為に徹夜で並んだ。周りは同じファンと言えども知らない人ばかり。スマホもなく、4月中旬で夜は肌寒かった。過酷だったが、サイン本と握手のためならと、今よりは若かった私は比較的元気だった。1000人限定。当日朝一番の電車で来た人は既に1000人枠に入らず、愕然としていた。

レスリーさんとの握手は初めてではなかった。その何年か前に香港のコンサートで握手してもらったことがあった。当時香港では盛んにコンサートが行われていたが、日本とは微妙にルールが違い、席から立ち上がることは厳禁で写真撮影は自由だった。会場でそれを知り、皆がパシャパシャ撮影するのを横目で見ながら、観光でフィルムが尽きてしまっていた私は激しく後悔していた。私と友人の席の周りは日本人ばかりで、とても良い席だった。コンサートは長丁場で、レスリーさんは何度も衣装を着替える。合間を見てトイレに行き大急ぎで戻って来ると、握手コーナーが始まっていた。舞台はすり鉢状になっていて、このコーナーが始まると前方の席の観客はここぞとばかり舞台間近に押し寄せる。観客とアーティストの距離は目と鼻の先だ。スタッフに支えられながら、彼は端から端まで握手して歩く。驚いたが、恒例のことのようだった。軽く手を出した私は、想定外の力で引っ張られ、思わず彼の汗だくの顔を見た。大好きなコンサートで乗りに乗っているアーティストの笑顔がそこにあった。

そんな握手を思い描いて臨んだサイン会は驚くべきものだった。彼の隣に立って、サインするページを開く担当がいる。デスクに置かれた本にレスリーさんがサインをする。その本を閉じて購入者に渡す係の人がいる。それはまるでよく出来たオートメーションのごとく粛々と続けられた。会話などしている間はない。握手はしたが何の記憶もない。ただただ機械的にサインをしている彼を、徹夜開けの頭で呆然と見ただけでイベントは終了した。ショックだった。あまりにも違う彼だった。その4年後に彼が亡くなり、彼と親しかったライターさんが後に出版された追想録でその日のことを書いておられた。1000人分サインし握手することが体力的にどれだけ大変かが綴られていた。彼は一体どんな気持ちであの場にいたのだろう…。今となっては知るよしもない。

さて、もう一つのイベントは藤原竜也さんのファンクラブイベントである。彼が20才になる前から何度か握手会に参加した。これも古い話である。彼の握手会はいつも始まりと途中(自分の番)だけを知っていて、いつ終わったのかは後で知った。午後1時から始まった握手会が夜8時まで続いた、とかいうのは珍しいことでも何でもなく、恒例のことだった。それは人数に関係なく(例え1000人との握手でも)、竜也さんがファン一人一人と会話するからである。立ったままで。今にして思うと、決してそれを止めたり追い立てたりしなかったスタッフが凄いとしか言いようがない。マネージャー氏も笑いながら見ていたりした。イギリス公演をはじめ海外のツアーにも何度か参加したが、ホテルで行われるパーティー後の握手会さえいつも通り。ファンは皆自分の部屋で「まだやってるの?」と話し合ったものだ。若く活力に満ちていたので、本人がやると言い切ったのかもしれない。とにかく毎回凄かった。そんな竜也さんも今や41才。ファンクラブをやめてしまったので全くわからないが、さすがに今はそんなことしてませんよね?ね?(笑)

私はこの二つのイベント、まして二人を比較してどっちがどうとか言うつもりは全く無い。年齢も状況も違う。ただ、一つだけ言えるとしたら、一つは出版社主催のイベントで、一つはファンクラブ主催のイベントだということだ。この違いは大きいような気がする。(ファンクラブイベントも、事務所の考え方で変わるが)。素敵なスタッフに恵まれることも才能の一つのような気がしてならない。