推し活修行 ~田中圭さんを深く静かに推す~

映画・演劇・本(乱読)が好き。田中圭ファン。圭モバプラチナ会員。

監督と俳優

台湾の候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督がアルツハイマー病を患い引退することになったと新聞に出ていた。候監督と言えば「悲情城市」だ。一時期台湾映画ブームがあり、新作だけでなくリバイバル上映の作品もよく観たが、これほど感銘を受けた映画はない。トニー・レオンの最高傑作だと思う。私と親友はトニー・レオンが出ている名作という前知識だけでこの映画を観に行った。観終わった後、私たちはあまりの感動に言葉が出てこず、互いに無言のままだった。

あらすじを、こんな感じですと簡単に書くことは出来ない。1945年以降、日本の統治から離れた台湾が国民党政府になるまでをベースに、激動する政局に振り回される国民の姿を、ある一族四兄弟を中心に描いている。兄弟の末っ子、聾唖の青年文清をトニー・レオンが演じ、文清がその純粋さ故に周囲の誰からも愛され、政争に巻き込まれ命を落とすまでの日々が描かれる。写真館を営む文清が反政府主義者と誤認され、追われ逃げる前に家族と撮った一枚の写真。若く美しい夫婦と幼い息子。その写真が胸に焼き付いて離れない。

前にも書いたが、私はかつてレスリー・チャンの大ファンで、レスリーを通してトニーを知った。個性の強い香港映画界の面々の中で彼は珍しくまったりとした温厚な人で、その善人ぶりを表す逸話がいくつもある。文清役はまさにはまり役で、彼に文清役を演じてもらいたかった監督が台湾語の出来ないトニーのために文清を聾唖の設定にしたということを後で知った。この映画はベネチアで金獅子賞を獲り、トニー・レオンは一躍トップスターになった。2000年にはカンヌで主演男優賞を獲り、名実共に国際的な俳優になった。今観ても決して色褪せない作品を、今こそもっと多くの人に観てもらいたいと思う。

監督と俳優、双方にとって幸せな出会いというものがある。

城定監督、圭さんでもう1本、長編を撮って下さい。